平成21年度当初予算編成に対する重要政策提言

2008年9月11日、自民党県議団の執行部と正副部会長は井戸知事に対して67項目からなる来年度当
初予算編成に向けた重要政策を提言いたしました。

重要政策を提言の様子は「活動状況」のページでご確認いただけます。
→活動状況のページを見る

下記に提言の内容を全文掲載いたします。ぜひご確認くださいませ。

 

平成21年度当初予算編成に対する重要政策提言

 

平成20年9月11日(木)

兵庫県議会自由民主党議員団

幹事長  山本敏信

政務調査会長  石堂則本

 

いま、私たちは、地球温暖化や貧富の格差、未知の感染症の発生、テロとの戦いなど、地球的規模での深刻な課題に直面しています。

 

一方、国内では食品の安全性を揺るがす相次ぐ企業の不祥事など、企業倫理の崩壊、幼い子どもの命、女子高校生の命が突然奪われる痛ましい事件や通り魔事件、親による幼児虐待や肉親の殺害など、基本的な倫理観や人間性の欠如により、生活の安全・安心が脅かされています。

 

また、学校現場においては、いじめなどによる自殺の連鎖的発生が社会問題化しているほか、学力低下問題など、公教育に対する信頼が揺らいでいると言わざるをえません。

 

我が国では、古来から豊かな自然の恵みへの感謝とともに、その脅威に対する畏怖の念を抱き、自然と共生する考え方が根づいていました。このような自然と共生したライフスタイルや質素・勤勉をはじめとした数々の美徳など、日本人の伝統的な特性の回復が様々な問題を克服していくうえで、重要な鍵となることは明らかであり、子どもに、明るい未来を与える教育改革などを積極的かつ強力に推進することが必要です。

 

私たちは、このような時代の潮流を的確に認識した上で、県民の視点にたった政策実現に努め、県民主体の県政を推進していかなければなりません。

 

さらに、少子高齢社会や人口減少社会の到来を見据え、社会保障システムの再構築や労働力の確保など経済成長の基盤整備とともに、家族や地域のきずなの回復のほか、子どもを安心して授かり、すこやかに育てることができる環境整備など、新しい時代に対応した県政の推進が求められています。

 

行財政構造改革に関しては、原油をはじめとする原材料の価格高騰などを要因として景気の拡大が途切れ、一転して後退局面入りが鮮明になっており、今後の景気の動向如何によっては、収支不足が拡大する恐れがあります。さらには、地方財政健全化法に基づき、公社等も含めた新たな指標も導入されるなど、より一層厳しい財政運営を強いられることとなっており、本年2月に策定された第一次新行革プランに基づく取組を進めているところですが、今後策定される新行財政構造改革推進方策による改革を着実に進め、将来にわたる財政構造の弾力性の確保と多様な県民ニーズに的確に対応しうる新たな行財政運営の枠組を確立していかなければなりません。

 

また、真の地方分権の実現のためには、第二期地方分権改革の推進が必要不可欠であり、これまで以上に地方が一体となった取組が必要です。

 

さらには、集中豪雨による水害や土砂災害のような自然災害、JR脱線事故のような突発的に発生する都市型災害に的確に対処できるよう、危機管理体制の一層の強化も必要です。

 

このような課題が山積している今こそ、知事には、より一層強力なリーダーシップが求められるのであり、その手腕が期待されるところであります。

 

知事とともに県政運営の重責を担うわが党議員団としては、県政の責任政党として、従来にも増して政策に優先順位を付け、貴重な県民の税金である財政資源を効率的・効果的に配分する努力を絶えず払っていく所存であります。

 

以上の認識に基づき、わが党議員団は、以下に掲げる67項目を重要政策として提言いたします。

 

知事におかれては、平成21年度当初予算編成にあたり、これを最大限に尊重し、その実現を図られるよう強く申し入れます。

 

?  自律・分権型社会を先導する行財政構造の確立

 

1  地方分権の推進について

 

平成16年度から3年間、「三位一体の改革」が進められたが、地方六団体が提案した「国庫補助負担金等に関する改革案」の達成率は、金額ベースで12%にとどまり、地方が提案していない国庫負担金の負担率の切り下げや新たな都道府県負担の導入など、多くの課題を残した。

 

平成18年12月に「地方分権改革推進法」が成立し、現在「新地方分権一括法」の制定に向け、国と地方の役割分担の見直し等の検討が進められているが、分権改革をより一層推進する観点から、地方税財源の充実強化や偏在是正のほか、国と地方の本来あるべき役割分担や都道府県制度のあり方の検討などについて、全国知事会等を通じて国に働きかけるなど、第二期地方分権改革の推進に向け真の地方分権が実現されるよう引き続き着実に取り組むこと。

 

また、県民に対し、改革の意義や必要性についてわかりやすい広報を進めること。

 

さらに、関西広域連合(仮称)については、地方の自主性を発揮できる新たなモデルとなりえることから、設立に向けた取組を進めていくこと。

 

2  新たな行財政構造改革の一層の推進について

 

原油価格の高騰などを要因として、景気の後退局面入りが明らかとなっており、今後の景気動向によっては、歳入の確保に影響を及ぼし、収支不足が拡大する恐れもある。また、昨年6月には地方財政健全化法が成立し、平成20年度決算からは公社等も含めた新たな財政指標が導入されるなど、本県の財政運営は、より一層厳しさを増している。

 

本年2月に決定された第一次新行革プランに基づき、平成20年度当初予算から行革の取組を進めているが、今後策定される新行財政構造改革推進方策を着実に実施し、早期に財政の健全化を果たすために、限られた歳入の中で、施策の選択と集中を徹底するとともに、さらなる歳入の確保に努めること。

 

また、こうした厳しい財政状況にあっても、少子高齢社会や人口減少社会の到来を見据え、県民から求められる新しい時代に対応した県政を推進することが必要である。このため、引き続き経費支出の効率化に努めるとともに、限られた財源を重点配分し、必要な施策の充実に取り組むこと。

 

3  分権型社会における県と市町の新しい関係の構築について

 

市町合併の進展により、県内の市町数は大きく減少し、行財政規模の拡大が図られた。市町は住民に身近な行政分野を担う基礎的自治体として、これまで以上に自立的かつ主体的にその役割を果たすことが求められている。

 

一方で、県は、市町の行政運営への支援や市町間の広域調整、専門的・先導的な分野への対応などの役割が重要となってくると考えられる。

 

そこで、県と市町の役割分担をより明確にし、市町の行政運営体制の整備の進展を踏まえ、本来市町が担うべき権限・事務の積極的な移譲を図るとともに、市町を超えた地域課題への対応や市町間の調整機能の発揮など、地域の実情に応じ、県と市町の新たな関係の構築について検討すること。

 

また、県民局等地方機関のあり方についても、これらの観点も踏まえて引き続き検討していくこと。

 

さらに、今年4月に西宮市が中核市へ移行し、尼崎市も今後移行を予定しているが、このような状況を踏まえ、政令指定市や中核市における役割分担や一層の権限移譲についても、検討していくこと。

 

4  税財源の確保について

 

地方分権が進展する中、国と地方の役割分担に見合った自主的・安定的な税源の確保など地方税の充実強化とともに、三位一体改革により大幅に削減された地方交付税の復元・充実が喫緊の課題であり、国に強く働きかけを行うこと。

 

また、今後策定される新行財政構造改革推進方策に基づく行財政改革を着実に進めていくためには、自主財源の確保に努めていく必要がある。税収確保に重点的に取り組むとともに、課税自主権の活用について検討を進めること。特に、現行の法人県民税超過課税(第6次延長分)の延長協議にあたっては、財源の使途を十分に検討していくこと。また、県民緑税の有効活用について、検討を進めていくこと。さらに、ふるさと納税の促進のため、情報発信の充実に努めること。

 

?  美しい兵庫の実現をめざす「21世紀兵庫長期ビジョン」の推進

 

1  「21世紀兵庫長期ビジョン」の実現に向けての施策・事業の推進について

 

「全県ビジョン推進方策」については、工程や数値目標に基づいて点検・評価・公表を引き続き進めるとともに、「県政推進重点プログラム50」や主要な分野別計画との整合を図りながら、「21世紀兵庫長期ビジョン」の実現に向けての施策・事業を推進すること。

 

また、「地域ビジョン推進プログラム」(期間:平成18年度?22年度)に掲げた地域を越えた幅広い交流や、県民と県民局が取り組む協働のシンボルプロジェクトを推進するとともに、プログラムの実現状況を県民局毎に適切に点検・評価していくこと。

 

なお、ビジョンの実現に向けて、県民参加で開催している各種会議については、県民局単位、全県単位でそれぞれの役割を明確にし、必要に応じて整理見直しを進めるとともに、効率的かつ効果的な運営に努めること。

 

次に、参画と協働の県政の推進にあたっては、首長と議会の二元制という地方自治制度を前提として、県の組織が一体となって、基本的な考え方を共有し、実践していく姿勢が不可欠である。

 

地域課題解決の推進力となる地域団体活動の活性化や参加者の拡大など、活動の裾野を広げる支援策を講じること。

 

2  維持管理における公民協働の仕組みづくりの推進について

 

県民が道路や河川、公園などの身近な社会基盤に対する愛着と誇りを持ちながら利用していくためには、地域の貴重な共有財産であるという意識を育み、自分ができる範囲で維持管理に携わっていくことが重要である。

 

そこで、道路植栽や河川の草刈り、公園運営など、維持管理における公民協働の仕組みづくりをより一層推進すること。

 

3  真の男女共同参画社会の構築について

 

男女共同参画社会の名のもとに、男女の性差や役割分担を否定するいわゆるジェンダーフリーに基づく実践が報告・報道されているが、男女共同参画に関する県民の認識が誤った方向に進んでいないか、非常に憂慮されるところである。

 

このため、男女共同参画社会づくり条例に基づく諸施策の展開にあたっては、男女の性の違いを認識する中で、両性の尊厳と各自の能力に応じた真の男女共同参画社会の構築に向けて、「男らしさ」「女らしさ」を前提とした社会や家庭のあり方の普及、学校現場においても児童生徒に接する教員に対する指導の徹底などに努めること。

 

また、以上の点を踏まえ、県民参加のフォーラムなどについて、講師の選定、進め方などに十分留意し、広範囲な県民が参加できるよう配慮すること。

 

?  県民生活を支える足腰の強い経済・雇用対策の推進

 

1  社会経済情勢の変化に的確に対応した対策の推進について

 

我が国の経済は、原油をはじめとするエネルギーや原材料の価格高騰、米国のサブプライムローン問題等の影響により、景気の減速がより一層進んでおり、収益の減少に伴う企業の業況感の慎重化や、石油製品や食料品をはじめとする消費者物価の緩やかな上昇に伴う個人消費の伸び悩みにつながっている。

 

また、緩やかな上昇基調にあった雇用・賃金の状況についても、その伸び率にかげりが見え始め、企業規模や業種間・地域間の格差や、正規・非正規といった雇用就業形態の違いによる格差等のさらなる拡大が指摘されている。

 

そこで、こうした我が国経済が置かれた厳しい現況を把握し、グローバル化の進展や人口減少社会の到来、成熟型経済への転換など、今日の社会経済情勢の様々な変化に的確に対応しながら、本県経済の持続的な成長と多様で安定した雇用就業の実現を図るため、本年2月に策定された「ひょうご経済・雇用活性化プログラム」に基づき、実効性ある各種施策を、適時適切に実施すること。

 

2  実効ある機動的な雇用対策の推進について

 

終身雇用制や年功序列型賃金体系の終焉、雇用就業体系の多様化など、急激に変動する経済・雇用情勢に応じた柔軟かつ機動的な施策の一層の充実を図るとともに、高齢者や女性、障害者、団塊の世代等の多様な就業ニーズに応じたきめ細かな就業支援など、兵庫らしい雇用確保体制を強化すること。

 

さらに、少子高齢社会を迎える中長期的な視点から、地域産業の持続的な発展に向けて、優れた技能・技術を継承し、次世代を担う産業人材を育成するため、新規学卒者等をはじめとした若年層を対象に、職業観・職業意識を十分醸成していくとともに、就職支援、能力開発を充実すること。

 

特に、増加するニートや年長フリーターに対する取組として、関係部局が連携した総合的な支援を講じること。

 

3  中小企業への更なる支援について

 

本県の地域経済に大きな役割を果たしている中小企業は、過去の長引く景気低迷や、原油や原材料の高騰の影響により、その経営環境は非常に厳しいものとなっている。

 

このため、引続き地場産業、建設業、観光・集客関連産業、商店街・小売市場などの中小企業への更なる支援が求められており、地場消費を含めて県内中小企業の市場拡大を積極的に推進するなど、中小企業への支援を強化するとともに、中小企業のまとめ役である商工会議所、商工会が地域振興の中核的役割を果たすことができるよう、一層の支援を行うこと。

 

中小企業金融においては、国との協力のもと地域金融の充実を図ること。とりわけ、昨年10月に導入された「責任共有制度」のもとで円滑な資金調達が行われるよう、必要な対策を講じること。また、創業の促進や新しい分野への進出など、経営革新を志す意欲的な中小企業に対しては、人材育成、技術開発・技術力向上も含めた実体的で総合的な支援を講じるなど、中小企業への支援に全力を挙げ、地域経済の活性化を図ること。

 

さらに、兵庫情報ハイウェイの利用促進などを通じて、中小企業のIT化支援を強化すること。

 

4  積極的な企業誘致の展開について

 

世界規模での地域間競争が激化するなど、企業誘致は厳しい状況にあるが、SPring-8やX線自由電子レーザーなどの世界的な研究基盤や、神戸に立地が決定した次世代スーパーコンピューターなど、豊かな地域資源を有する本県の特性を最大限に活かし、地元の市町、産業界とも十分に連携をとりながら、構造改革特区をはじめ拠点地区への産業集積を促進すること。

 

産業集積の促進にあたっては、産業集積条例の充実により、更なる税制優遇措置をはじめ、他府県より優位な条件や適用区域の拡大を図り、県下の産・学・官を有効に活用して優れた国内外企業を戦略的に誘致するとともに、地元の正規雇用の促進にも留意しながら、クラスター形成を図ること。

 

とりわけ、先端技術を有する環境創造型産業や地域の経済活性化、雇用の拡大に波及効果を及ぼすような企業の誘致に努めること。

 

併せて、企業誘致後における地域への経済・雇用効果のフォローアップを実施すること。

 

また、県内企業の海外進出支援などにより、経済成長を続ける中国などのアジア圏等との国際的な経済交流を推進すること。

 

さらには、神戸製鋼所ばい煙データ改ざん問題を踏まえ、地域と共生できる企業の育成に取り組むこと。

 

5  観光の振興について

 

人口減少社会を迎える中、地域の活力を高めていくためには、観光ツーリズムの振興を通じて、交流人口の拡大を図っていくことが必要である。

 

このため、県内に有する世界的、また我が国屈指の誇るべき地域資源を活かした魅力ある地域づくりを進めるとともに、県内市町や関係機関との連携のもと「大型観光交流キャンペーン(あいたい兵庫デスティネーションキャンペーン)」を積極的に展開し、本県の多彩な魅力を全国に発信し、観光客誘致を図ることを通じて、観光ツーリズムの振興を推進すること。

 

とりわけ、外国人観光客倍増をめざし、ホスピタリティの向上、外国人の視点によるツーリズムモデルコースの設定など、近年著しい伸びを示しているアジアからの誘客を促進する事業を強化すること。

 

6  県内建設業者の健全育成について

 

国・地方の公共事業関係予算が削減される中、県内建設業者の倒産件数は依然として高水準で推移しており、県内の建設業を取り巻く経営環境は厳しい状況が続いている。

 

健全な県内業者を育成するためには、まず第一に、安定して仕事が確保できるよう、受注の機会を確保する必要がある。特に、冬季などにより仕事の確保が制約される農山村部の業者は公共事業への依存度が高いことや、参画と協働の取組など県施策への業者の貢献度等も加味し、分離・分割発注、発注・完成時期の平準化等による受注機会の拡大を一層推進すること。

また、公共事業の品質・安全を確保し、県内の中小建設業者の倒産や赤字増大を防ぐため、適正な価格による受注に配慮し、適正な最低入札価格の設定と同時に、小規模工事における最低制限価格の改善などさらなる対策を行うことにより、不当に低い価格での受注の防止対策に努めるとともに、発注した工事の工程管理(納期)を徹底し、工事の質を十分チェックすることで、不良不適格業者の排除を行うこと。

 

さらに、県内業者の競争力向上を図るため、技術面で差別化を図ろうとする業者や資材の共同調達等により経営効率化を図ろうとする業者等に対する支援を積極的に行うこと。

 

とりわけ、得意分野の異なる企業の相互補完的な連携や他分野への進出等、建設業の再編につながる取組に対しては、融資制度の創設等の財政支援を行うこと。

 

?  県土の活力ある発展

 

1  社会基盤整備の推進について

 

活力ある県土の発展を図るためには、道路、河川、下水道等の地域間格差が生じている社会基盤の早期整備のほか、自然災害に備えた基盤整備や“ふるさとづくり”を支援する社会資本の整備が必要不可欠であり、安全・安心の確保のため最優先すべきである。特に、武庫川、加古川などの水害対策をはじめ、土砂災害の防止対策を行うとともに、一般道路渋滞緩和のため、利用料金負担の軽減を図るなど高速道路の利用促進等を図ること。

 

「新行財政構造改革推進方策」の最終案が検討されている中、県民の生活を豊かにする“ふるさとづくり”をめざした社会基盤整備については、コスト縮減に努め、一律カットすることなく、選択と集中により、必要な事業費を確保するとともに、地域の実情に沿った整備を行うこと。

 

特に、人や物の交流を促進し、自立できる地域づくりに欠かせない道路については、地域の道路整備に必要な道路特定財源を確保することを国に対して強く要望するとともに、高速道六基幹軸の早期整備、とりわけ鳥取豊岡宮津自動車道や北近畿豊岡自動車道の早期完成のほか、新名神高速道路及び大阪湾岸道路西伸部等の工事着手に向けた取組を早期に行うこと。

 

神戸空港を含む関西三空港については、適切な役割分担のもと、県内各地からの空港アクセスの充実を図るとともに、基幹空港としての伊丹空港の機能維持を踏まえた上で、コウノトリ但馬空港を含め空のネットワークを広げること。

 

社会基盤の補修費用の最小化や適正な管理を目的として導入したアセットマネジメントについては、対象施設の拡大、技術の向上など、更なる充実を図ること。

 

2  都市の再生に向けた基盤整備の推進について

 

都市部では、慢性的な交通渋滞、緑やオープンスペースの不足、ヒートアイランド現象、景観の悪化、駐車場の不足など、多くの課題が残されている。

 

このため、渋滞交差点の解消や、親水空間の整備等による河川の再生に取り組むほか、都市緑化や保水性舗装・遮熱性舗装等のヒートアイランド対策を進めるとともに、無電柱化や景観・屋外広告物対策を推進すること。

 

また、市街地整備やまちづくり交付金の活用など、魅力とにぎわいのある安全・安心な都市の再生に向け、市町とも連携し、総合的な取組をより一層推進すること。

 

特に、「県民緑税」を財源として展開する県民まちなみ緑化事業については、地域からの取組を進めるとともに、安全・安心及び環境改善等の観点から推進すること。

 

さらに、平成18年6月から改正道路交通法施行による違法駐車取締りが強化されているが、買い物客等の駐車場不足による影響のほか、運搬業者等の荷物の集配で駐車可能な場所を道路上に付設する取組や、市街地での二輪車を駐車する場所を確保する必要性が高まってきていることから、駐車・駐輪の施設確保に努めること。

 

3  ユニバーサル社会の実現に向けたバリアフリーのまちづくりの推進について

 

年齢や障害の有無等に関わらず、すべての人にとって暮らしやすい「ユニバーサル社会」の実現のため、多くの人が利用する施設や公共交通機関のバリアフリー化について、関係市町、関係機関とも連携して、これまでの成果を踏まえ、より一層の充実を図ること。

 

4  自給率向上に向けた農業施策の推進について

 

わが国の平成19年度の食料自給率は40%(カロリーベース)と、前年度より1ポイント上昇し、40%台に回復したものの、先進国のなかで、最低水準であることには変わりなく、危機的状況が続いている。

 

将来にわたって安定した食生活を送っていくためには、県単独事業の充実を図るなど、兵庫県独自の農業施策の推進を図り、生産・消費の両面にわたる自給率向上に向けた取組が重要である。

 

(1)「米政策改革大綱」の推進について

 

「米政策改革大綱」に即して、平成19年産米から、農業者・農業団体が主体的に需給調整を行うシステムへ移行した。さらに、今後、新たな米流通システムへの見直しなどが実施される。

 

そこで、市町とも連携を図り、農業者、農業団体の主体的な取組が展開できる仕組みを確立するとともに、本県産米の消費拡大と米粉食品などの普及啓発に積極的に取り組むこと。

 

(2) 集落営農組織の育成強化について

 

農山村地域では、高齢化や過疎化が進行し、それに伴う担い手不足や農地の耕作放棄が進んでいる。

 

安定した食料生産を維持していくためには、地域全体で農地を保全・活用していく取組を進めるほか、特に、集落営農組織の育成を強化するとともに、JA、市町、県が一体となって営農指導体制を強化し、競争力のある農業を確立すること。

 

また、これまで維持されてきた農村社会が今後も維持できるよう配慮するとともに、農山漁村の活性化につながる年間を通じたグリーン・ツーリズムの普及に努めること。

 

(3) つくり育てる漁業の推進について

 

水産資源の減少が懸念されることから、漁獲情報の的確な把握や漁場整備を行うとともに、重要魚種の種苗生産や地域特性に合った新たな栽培魚種の量産技術の開発等、栽培漁業の推進を図り、消費者へ安定した水産物の供給を行うこと。

 

とりわけ、全国屈指の養殖ノリの生産量を誇る播磨灘で起きているノリの成長に必要な栄養塩類が減少する異変に対し、総合的な対策を講じること。

 

(4) 漁業を取り巻く厳しい環境への支援の実施について

 

操業用の燃料価格の著しい高騰により、全国的に出漁の断念、一斉休漁や廃業者が発生している。こうした極めて深刻な現状を踏まえ、価格高騰による漁業者への影響を最小限にとどめるとともに、消費者に安定した水産物の供給を図るため、国や関係機関とも連携し、漁業経営の存続につながる抜本的な対策を講じること。

 

また、今年3月に明石海峡において発生した船舶衝突事故について、国や関係機関とも連携し、沈没船の引き上げ、漁業者の被害回復、風評被害の防止等について、万全の措置を講じること。

 

(5) 食育の推進について

 

子どもの頃から望ましい食習慣など「食」について的確な教育を進めることは、単に栄養の充足のみならず、子どもの心身の発育、発達に大きく寄与し、将来の生活習慣病の予防など、広範囲にわたる影響が期待されるものである。

 

このため、「食の安全安心と食育に関する条例」及び「食育推進計画」に基づき、実効性のある施策展開を図ること。

 

また、こうした取組の中で、地域固有の食材あるいは食文化について知るとともに、食材を提供する農業の役割などについて体験や理解を深めることが、人間性の形成にも大きく貢献するものと考えられる。

 

そこで、おいしいごはんを食べよう県民運動・国民運動や教育委員会とも連携しつつ、知育、徳育、体育に加えて、食育を教育の重要な柱に位置づけ、食育の副読本を作成するなどにより推進すること。

 

(6) 「農」の振興に向けた試験研究機関等の充実について

 

ひょうごの「農」を生かす社会の実現を支える技術開発、普及をさらに促進するとともに、新品種開発など地域に密着した適地・適作を推進するため、「県立農林水産技術総合センター」、県内外の大学や広域的研究機関の連携を進め、営農指導力の強化充実に努めること。

 

また、昨年4月に開設した「森林動物研究センター」の調査研究成果を踏まえ、野生動物による農林業被害への対策を推進すること。とりわけ、生息頭数が適正数を大きく上回っているシカについては、個体数管理の取組を重点的に実施すること。

 

5  森林の保全・県産木材の利用促進について

 

「新ひょうごの森づくり」を推進し、森林の安全で快適な環境の確保に努めるとともに、「県民緑税」を活用し、計画的に「災害に強い森づくり」を進め、間伐木を利用した土留工の設置や針広混交林化等を図ること。

 

また、針葉樹林については、伐採・植栽・保育の林業生産サイクルの円滑な循環を図るため、学校等の公共施設をはじめとした様々な建物等への県産木材の利用促進を図るとともに、競争力の高い最終商品を供給できる「県産木材供給センター」の実現に向け、積極的な取組を進めること。

 

6  都市における農業の振興について

 

阪神間をはじめ、市街化区域における農地は減少を続け、次世代に都市及び都市近郊の農業・農地を継承していくことが極めて困難な状況となっているが、都市農地は一旦失われれば、その回復は極めて困難である。

 

都市及び都市近郊の農地は、人口集中地域への安全な野菜等の供給拠点であると同時に、ヒートアイランドなど地球温暖化対策や災害時の緊急避難場所の面からも、都市部における重要な機能をあわせ持っている。

 

このことを十分に踏まえ、都市地域における農業振興、農地保全について、「ひょうご農林水産ビジョン」に明確に位置づけるとともに、都市部固有の課題に的確に対応する施策展開及び制度改善に向けた取組を積極的に進めること。

 

?  21世紀社会にふさわしい医療・子育て・福祉対策の推進

 

少子高齢化が急激に進行する中で、子どもたちを安心して安全に産み育てるための環境づくりは急務となっている。また、持続可能な社会保障制度の確立は、県民の関心も高く、最も重要な課題のひとつである。高齢者や障害者をはじめとした県民の生活を支える医療・福祉の充実はもとより、未来を担う子ども達を安心して生み育てられる環境整備は不可欠である。

 

そういう意味でも、医療・子育て・福祉に積極的に取り組む市町に対して、県が的確に支援していくことが必要である。

 

1  少子対策の総合的な推進について

 

(1) 子どもを安心して生み育てられる環境づくりについて

 

「ひょうご子ども未来プラン」に基づき、少子対策本部において、事業の選 択と集中、特に、安全・安心施策への重点化や地域特性に応じた施策展開な ど全庁的な抜本的対策を講じ、子育てと仕事の両立支援など、子どもを安心 して生み育てられる環境づくりにより一層取り組むこと。

また、第二次ベビーブーム世代(1972年から74年生まれの世代)が結婚・出産適齢期を迎えているここ5年程度が、少子化対策にとって特に重要な期間である。合計特殊出生率は2年連続で前年を上回り、1.34(平成19年)となったところであるが、この傾向を一時的なものに終わらせないよう、新婚・子育て世帯向けの民間住宅家賃補助制度の創設や県営住宅優先枠の拡大、多世代が同居できる住環境づくり、職場結婚を奨励する雇用主の取組支援、妊娠・出産を可能にする職域での環境づくりなど、短期間で実効性が上がる施策に取り組むこと。

 

さらには、結婚・子育て・家族の大切さを確認するための意識改革のほか、家族のきずなや地域のつながりを取り戻す施策を展開するなど、中長期的な 観点からも取り組むこと。特に、子育て中の親が子育てを通じて子どもと共 に成長するよう親学を積極的に推進すること。

 

(2) 子どもの健全な育成策の強化について

 

近年、核家族化や女性の社会進出に伴って、家庭や地域での子育てを支える力が一段と低下している。

 

そこで、子育てに対する親の自覚を高めるとともに、親に対する育児指導の徹底、保健所や保育所等での相談・指導の充実、相談窓口のネットワーク化などについて積極的に取り組むこと。

 

また、子育て支援NPOと保育所との連携強化、地域の保育力の向上に努めるとともに、ひょうご放課後プラン事業による子どもの安全で健やかな居場所づくりの推進に努めること。

 

加えて、働く親の負担の軽減を図るため、「認定こども園」の円滑かつ適正な実施や保育時間の延長等保育サービスを充実させるとともに、安心して子どもを預けられる条件整備に取り組むこと。

 

一方、近年急増している児童虐待については、市町が一義的な窓口になったとはいうものの、それを支援する県の取組が不可欠であることから、こども家庭センター等の機能強化を図るとともに、市町、警察、学校、医療機関、保健所、児童福祉施設など関係機関との連携強化を図ること。

 

2  高齢者の生きがいづくり施策の充実について

 

高齢化が進展する中で、高齢者が健康で生きがいを持ち、元気で活躍できる条件を整備することが強く望まれている。

 

このため、高齢者が学ぶ高齢者大学等の場を広げるとともに、高齢者が培ってきた経験や知識を社会に還元し、積極的に社会参加ができるよう、高齢者の人材バンクの創設やNPOへの参加の支援、シルバー人材センターのネットワーク化等の施策の充実を図ること。

 

3  改正介護保険制度の円滑な運営について

 

明るく活力ある超高齢社会の構築のためには、改正介護保険制度の円滑な実施運営が不可欠である。

 

そこで、予防重視型システムや新たなサービス体系の確立などをはじめとした改正介護保険制度の円滑かつ適正な運営を推進するとともに、市町等を支援すること。

 

また、兵庫県老人保健福祉計画を着実に推進するとともに、国において進められている医療制度改革を踏まえ、着実な介護基盤の整備を進めること。

 

さらに、市町、警察と十分に連携をとり、高齢者虐待の防止と善後策について十分な対応を講じること。

 

4  障害者自立支援法の円滑な推進について

 

障害者自立支援法の施行を踏まえ、新基準による障害程度区分認定事務等を実施する市町の体制づくりを支援し、事業者の指定や適正指導、障害福祉計画の着実な実施などを通じてサービス基盤の整備を進めること。

 

また、新制度の周知徹底を進めるとともに、利用者の急激な負担増に対する軽減策等を実施すること。

 

さらに、意欲のある障害者が能力・適性に応じて働くことができるよう、雇用施策との連携により、障害者雇用の促進を図ること。

 

このほか、発達障害児支援体制の整備を図ること。

 

5  地域リハビリテーション体制の確立について

 

障害者や高齢者が、住み慣れた地域で自立した生活を送るためには、適切なリハビリテーションを継続的に受ける体制を構築することが重要であるため、地域リハビリテーション体制を確立すること。

 

6  県立病院の構造改革について

 

県立病院については、かかりつけ医、医師会等との連携の下、専門性を効率よく発揮できる中核病院としての役割を分担していく必要がある。

 

高度先進医療の提供等専門性の充実や、地域の中核病院として果たしてきた役割を踏まえ、幅広いオープンな議論のもと、診療機能の高度化・効率化や経営改革の推進をはじめ、県民がより良質な医療を安心して受けることができるよう、「病院構造改革推進方策(改訂版)」、「県立病院改革プラン」を策定し、改革を推進すること。

 

また、県立病院の経営健全化を図るため、経営状況を的確に把握し、人件費を中心として評価、検討を行う必要がある。その上で、運営形態について、独立行政法人化、民営化、経営統合など様々な方面からの検討を行い、方向性を示すこと。

 

さらに、県民の安全・安心の確保に向けて医療の充実を図るため、適切な繰入金のもと、研究機材の更新も含め研究費の予算化を図り、適正な人材の確保に努めること。

 

なお、県民の信頼に応える良質な医療を継続的に実施していくため、老朽化した病院の建替改修や、高額医療機器の整備など、施設・設備の計画的な整備を進めること。

関連記事

カテゴリー

アーカイブ